神戸から全国へ──浮気調査を駆け抜ける調査員の長編物語

序章:真実とは、地図の上に現れる“ひとつの線”である

浮気調査とは、
「怪しい行動を追う仕事」と単純に思われがちだ。

しかし実際にはもっと深く、もっと複雑で、
そしてもっと残酷だ。

対象者の行動を“点”として記録していく。
その点が、時間と共に線となり、
やがて真実を描き出す。

その線が
神戸という街から遠く離れた都市へ、
県境を越え、地域を越えて伸びていくことも少なくない。

人が自由に動き回る時代。
浮気は“地域問題”ではなく“全国規模の現象”となった。

ここに記す物語は、
ひとつの依頼から始まり、
神戸から近畿圏外、関西圏外へ飛び出し、
やがて全国を舞台にした長編の追跡劇である。


◆第1章:依頼──「夫の出張が増えたのは、たぶん嘘です」

ガルエージェンシー神戸三宮の相談室。
落ち着いたトーンの部屋の中に、
30代後半のAさんが座っていた。

Aさんは神戸市中央区に住む女性。
子どもはいない。夫とは10年の結婚生活。

声は震えているが、
涙を見せないように必死で堪えているのが分かった。


■夫の変化

Aさん:「夫の出張が増えたんです。仕事のことは全部話していたのに、最近は何も言わない。
    “今日、出張だから”とだけ言って家を出ていきます。」

調査員S:「以前と何か違う点はありますか?」

Aさん:「スマホのロックが変わりました。
    しかも指紋認証、顔認証、パスコード…全部変えられています。」

調査員S:「その他にも気になる点は?」

Aさん:「最近、帰ってきても明らかによそよそしいんです。
    会話も減りました。」


■浮気の典型パターン

Sはこの時点である程度の見立てを持っていた。

スマホを変える

出張の頻度が急増

予定を曖昧にする

家庭内での態度が変わる

これは教科書に載せられるほど典型的な「浮気前兆」である。

しかし、Sが驚いたのはその先だった。

Aさん:「夫の出張先は大体大阪なんですが…
    最近、大阪の会社の同僚から
    “そんな出張知らない”と言われたんです。」

この瞬間、
調査員Sの心の中で“調査の方向性”が明確になった。

──この夫、一度や二度ではなく、習慣的に嘘をついている。
 そして行動は、神戸でも大阪でもない“どこか別の場所”にある。


◆第2章:1日目──「出張」のはずの夫が向かった先

調査は即日スタートした。
Aさんの夫は朝8時に自宅を出発。
スーツ姿、キャリーケースなし。
「大阪出張」という設定にしては荷物が少ない。

調査員Sと補助調査員は尾行を開始した。


■夫が向かったのは…新神戸駅

夫は三宮駅方面へは向かわず、
そのままタクシーで 新神戸駅 へ。

調査員S:「大阪出張なら在来線で十分のはずだが…?」

夫は迷うことなく新幹線の改札を通過した。

そこでSは確信した。

──この男、完全に“出張偽装型”の浮気だ。
 しかも目的地は大阪ではない。


■乗ったのは「東京行き・のぞみ」

夫が乗り込んだのは、
のぞみ・東京行き。

「やはりか。」

出張偽装型の浮気では
「大阪出張」と言いながら東京に向かうケースが非常に多い。

大阪に比べ、東京は匿名性が高く、
ホテル街の規模も大きい。
しかも“ビジネス出張っぽさ”がある。

浮気相手が東京在住のケースは多い。


◆第3章:品川駅──そこで待っていたのは20代女性

品川駅に到着。
夫は女性を探すようにキョロキョロした。

そして、
黒いロングコートに身を包んだ
20代と思われる女性が近づき、自然に並んで歩き出した。

距離感は完全に“恋人同士”。

目を合わせる回数

歩幅が自然に合う

夫が荷物を持つ

会話中の笑顔の量

調査員はこうした細かな点を読み取り、
関係性を判断する。

──浮気で間違いない。


■向かったのはラグジュアリーホテル

ふたりは品川からタクシーで
“完全にカップル向け”の都内有名ホテルへ。

そして
“同時入室”を確認し、撮影。
滞在記録も確保。

証拠としてはすでに十分だが、
Sはまだ終える気はなかった。


◆第4章:2日目──「出張では説明できない行動」

翌朝。

ふたりはホテルを出て、
レンタカーで移動を始める。

向かった先は──

■箱根

自然豊かな温泉地。
カップルが泊まる“露天風呂付き客室”が人気の旅館にチェックイン。

チェックイン時の距離感、
部屋に向かう際の行動、
旅館周辺の散策など、
すべてが「完全に恋人」の動き。


■御殿場アウトレット

定番のデートスポットだ。
バッグやアクセサリーを見ていた女性に、
夫が「買ってやる」と言わんばかりに寄り添う。

この瞬間、
Sは記録を取りながら、
心の中で依頼者Aさんの気持ちを想っていた。

「この光景を見たとき、Aさんはどれほど辛いだろう。」

調査とは、
真実を明らかにする仕事。
だからこそ残酷でもある。


■山梨のワイナリーへ

さらに長距離移動。
ふたりは山梨県のワイナリーで
景色の良いレストランに入り、
ワイン片手に談笑する。

ここまで来ると、
“単なる浮気”という言葉では片付けられない。
完全に“恋人関係”であり、
夫の行動を擁護できる余地はない。


◆第5章:広域調査は、単なる尾行では終わらない

ここまで遠く、
しかも複雑なルートを辿る調査では、
調査員のスキルが試される。

■神戸から関東までの調査は難易度が高い

地理勘がない

交通手段が多い

人が多い

都市構造が複雑

ホテルが多すぎる

レンタカーの追跡が困難

これらすべてを乗り越えなければならない。

だからこそ、
ガルエージェンシー神戸三宮には
全国調査ネットワークがあり、
必要な時は関東の調査員と連携して追跡が途切れないようにする。