広域浮気調査に命を懸けた男の軌跡
神戸へ戻る夜──調査員が抱える“誰にも言えない感情”
関東での三日間の追跡を終え、調査員Sは夜行バスで神戸へ戻った。
東京駅22:00発の高速バス。
体力は限界、充電器のバッテリー残量は4%、体内はコンビニ弁当の塩気とコーヒーだけ。
しかしSの心は不思議と静かだった。
「依頼者にとっては地獄の三日間でも、俺にとっては“事実を取り戻す仕事”だ。」
対照的に、車内の薄暗い灯りの下でスマホの写真を確認する。
そこには、対象男性と20代女性が手を繋いで歩く姿が映っていた。
温泉旅館の入り口、ホテルのエレベーター、深夜のコンビニ前──
時間・行動・出入りがすべて揃った「裁判で使える証拠」。
Sは深く息を吐いた。
「これでAさんは前に進める。」
探偵とは、“誰かの人生を再起動させる仕事”なのだ。
◆第8章 神戸の事務所で待つ“もう一つの問題”
三宮ベンチャービル911。
ガルエージェンシー神戸三宮の事務所に戻ると、代表が言った。
「S、次の案件なんだけど……ちょっと特殊だ。」
Sは笑う。
「特殊じゃない案件ってありましたっけ?」
代表は苦笑しながら資料を手渡す。
■次の依頼内容
神戸市兵庫区在住の妻からの依頼
夫が突然「土日だけ三重県に釣りに行く」と言い始めた
単独行動のはずが、いつも同じ時間に戻ってくる
車の走行距離が釣りにしては多い
しかも、なぜか日焼けしていない(本当に釣り?)
よくある“不自然な釣り”パターンだ。
浮気調査あるあるでは、「釣り」=半分不倫のコードワードであることが多い。
◆第9章 三重県への潜入調査──地元地理を知らない土地の戦い
翌週、調査は開始された。
対象者の車(白のSUV)は朝6時に神戸を出発。
高速で東へ向かう。
Sは無線で報告する。
「対象、名阪国道に入りました。大阪・奈良方面ではなく“伊勢湾側”の動きです。」
三重県は神戸の調査員にとっては“馴染みの薄い土地”だ。
道路の構造・渋滞ポイント・最短ルートが頭に入りづらい。
こういうときに威力を発揮するのが、全国ネットワークの探偵社という強みだ。
Sは伊勢市付近のガルグループ拠点に連絡し、
リアルタイムで“地理共有”を受けながら尾行を続ける。
そして対象者が向かった先は──
釣り場ではなく、三重県鳥羽市の観光ホテルだった。
さらに、駐車場には見覚えのある車が停まっていた。
地元・神戸ナンバーの軽自動車。
「釣り仲間ではなく、地元の“女性”だな……。」
Sは腹を括った。
◆第10章 鳥羽のホテル潜入──探偵の極限テクニック
ホテルに入る瞬間、対象者は警戒したように振り返った。
そこでSは動きを止め、観光客を装って建物を撮影。
調査では、
“自然に見える不自然な動き”は絶対にしない
という鉄則がある。
Sはホテルロビーで座り込み、対象者がチェックインする瞬間を“自然に”撮影した。
続いて、エレベーターへ向かう対象者と女性。
手を繋ぐ
ボディタッチ
部屋番号
滞在時間
これらを合法的に記録する。
探偵は盗撮も盗聴もしない。
“必要な場面で合法的に撮影する”のがプロの技術である。
◆第11章 神戸で崩れ落ちた依頼者──証拠を手渡す瞬間
神戸に戻り、依頼者に証拠を渡す日。
Aさんは静かに写真を見つめながら、震える声で言った。
「ここまで……ここまでしてくれたんですね……。」
探偵の仕事で最も重い瞬間だ。
Sはゆっくりと答えた。
「事実を知ることは、苦しみでもあり、救いでもあります。
ただ、法的に有利な立場で整理を進めたいなら、ここからが始まりです。」
ガルエージェンシー神戸三宮は弁護士とも連携しているため、
依頼者は“証拠をどう使うか”のサポートを受けながら前に進める。
Aさんは涙を拭き、静かに頭を下げた。
◆第12章 探偵が県外調査に強い理由──全国を駆け回る“本物の現場力”
Sが座っていたデスクの横には、
大阪・愛知・福岡・岡山・東京へと向かったときの資料が積まれている。
調査員が長距離調査で使うスキル
新幹線・飛行機・深夜バスの尾行
レンタカー尾行
ホテル潜入
地元交通事情の即時把握
他県ガル拠点との連携
長時間張り込みの身体管理
時間差移動・ダミー動線の読み解き
観光客・仕事客・地元客への“擬態”
探偵の仕事は、ただ“ついて行く”だけではない。
●相手の心理を読む
「ここで振り返る」「ここで別ルートに入る」
これを予測するのがプロ。
●地理感覚を読む
初めて行く土地でも、10分あれば“自分の中の地図”を作る。
●違和感を察知する
対象者の“歩幅の速さ”で感情を読み取れる調査員もいる。
調査員Sはこう語る。
「浮気調査は、心理戦と体力戦と地理戦がすべて同時に起きる仕事なんです。」
◆第13章 浮気調査の現場は、物語よりもドラマチックだ
ここまでの話を聞くと、
まるでドラマのように思えるかもしれない。
しかし、探偵の世界ではこれが“日常”である。
神戸→名古屋→長野→新潟へ移動
大阪→福岡→熊本へ空路追尾
京都→鳥取→島根まで車尾行
和歌山→三重→愛知へ海沿いルートで追跡
東京→神奈川→静岡→愛知へ3日間連続尾行
これらはすべて、過去に実際にあった調査の再構成だ。
探偵とは、
対象者より早く気付かなければならない、
対象者より先に動かなければならない、
対象者より強くなければならない仕事。
神戸を拠点にしながら、
その舞台は“全国すべての土地”なのだ。
◆第14章 広域浮気調査の裏側──調査員の一日(県外版)
Sの一日は過酷だ。
04:30 起床
対象者の“出発時間が早い人”の場合は常にこの時間。
06:00 尾行開始
対象者の自宅付近にて待機。
“生活リズムを読む力”が必須。
08:30 他県へ移動
高速道路・新幹線・フェリー・飛行機──
すべてが尾行ルートになり得る。
13:00 張り込み
飲食店やショッピングモールは“長時間張り込み”の主戦場。
15:00 証拠撮影
距離・角度・タイミングのすべてが要求される。
19:00 別行動
対象者が女性と食事・ホテルへ。
調査員の集中力が最も試される時間。
23:00 調査終了
その日のまとめ作業を行う。
02:00 仮眠
3〜4時間の睡眠で翌日また“戦場”へ。
こうした日々を繰り返して、
依頼者はやっと「真実」を手に入れられる。
◆第15章 そして、調査員Sの物語は続く
神戸の街に帰ってきたとき、
Sは必ず海を見る。
ポートタワーの灯り、
港の潮の匂い、
深夜の静かな波。
遠く離れた土地で過ごした日々の緊張が解ける瞬間だ。
「よし、次の依頼も絶対に守る。」
調査員Sの“県外調査の旅”は、
今日もどこかで始まっている。

