大規模広域調査】調査員Sが挑んだ“全国縦断・7日間の追跡劇”
新たな依頼──「夫が出張で全国を飛び回っている。その本当の理由を知りたい。」
Aさんの案件が終わった数ヶ月後、
ガルエージェンシー神戸三宮に、また新たな相談者が訪れた。
依頼者は 神戸市東灘区在住・40代女性・Mさん。
静かな雰囲気の女性だったが、
落ち着いた表情の奥に“強い不安”が見えていた。
話を聞くと、夫はメーカー勤務で技術職。
月に数回の出張があり──
最近になってその回数が急増したという。
「出張のはずなのに、帰りが不自然に遅くて……
連絡も途切れることが多くなったんです。」
典型的な「出張偽装」だ。
しかし夫の行動には、これまでと違う“異質な気配”があった。
出張先が毎回違う
出張期間も一定ではない
急な変更が多い
行き先を具体的に言わなくなった
出張費の明細が減っている(会社経由の出張では?)
スーツケースの中に普段使わない服が入っている
Sは依頼書を見て、胸の奥がざわつくのを感じた。
「これは……全国規模で動いている可能性がある。」
◆第24章 初動調査──夫の車を追うと、予想外の方向へ
調査初日。
対象者の夫は、朝6時に自宅を出発。
スーツケースを持ってはいるが、スーツを着ていない。
ラフな服装に、キャップ、その上にサングラス。
出張にしては不自然だった。
車は神戸から東へ。
大阪へ向かうのかと思いきや、
高速を乗り継ぎ、滋賀県へ。
「滋賀……?」
出張で滋賀というのは珍しい。
さらに、琵琶湖の南側で高速を降り、
そのまま北へ向かう。
途中の道で、対象者は車を停め、
見知らぬ女性を乗せた。
その女性はスーツケースを持っていた。
つまり──
対象者と女性は“合流してこれから移動”だった。
◆第25章 レンタカー乗り換え──プロの探偵でも読み辛い“二重工作”
女性を乗せた後、二人は大型商業施設の駐車場に停車。
そこで、まったく別のレンタカーに乗り換えた。
しかも、
ナンバーは非連番
車種は同じタイプ
レンタカー会社も違う
場所も“死角”になりやすい立体駐車場の3階
完全に“尾行対策”を意識した行動だった。
一般人の浮気者ではまずやらない。
Sは直感した。
「これは夫だけが計画している浮気じゃない。
二人の関係は長く深い。」
そして2台目の車は、
そのまま北へ──福井方面へ向かった。
◆第26章 北陸入り──目的地は出張先ではなかった
夕方、福井県のホテル街に到着した対象者は、
女性とともにホテルにチェックイン。
部屋番号の特定、
ロビーの出入り、
時間記録──
探偵として必要な全ての証拠を押さえた。
通常の調査ならここで終了する。
しかし、この案件は違った。
翌朝、対象者と女性は再び車に乗り、
北陸道を一気に東へ走り出した。
向かった先は──
石川県金沢市。
観光地でもあるが、
出張の名目に使いやすく、
浮気者に好まれる“盲点エリア”だ。
神戸の探偵が北陸で張り込むことなど滅多にない。
しかしSは迷わなかった。
「追う。どこまでも行く。」
◆第27章 2日目夜──対象者の行動が“異常”へ変わる
金沢の繁華街で食事した二人は、
そのままラブホテルへ。
浮気の証拠としては完璧だったが、
問題はその後だった。
深夜1時。
ホテルを出た二人は、
まさかの方向へ車を走らせた。
北へ。
このルートは、
出張でも観光でもまず使わない。
目的地は──
富山県。
金沢から富山へ深夜移動する意味はない。
しかし二人はそのまま富山駅近くのビジネスホテルへ泊まった。
この動きは、明らかに
「神戸から遠く離れたところなら、バレない」という
“慢心の浮気行動”だった。
Sは言った。
「全国どこへ逃げても、俺は追う。
依頼者を裏切るわけにはいかない。」
◆第28章 3日目──そして二人は“さらに東へ”
富山で一泊した後、
対象者と女性は朝からまた移動を開始。
向かった先は──
長野県。
神戸→滋賀→福井→石川→富山→長野。
出張とは到底言えない。
日本列島を“東へ移動し続ける旅”のようだった。
ある意味では
逃避行、あるいは
ふたりだけの“全国縦断デート”。
しかしそれは、
妻を裏切り、家庭を壊す行為の連続でもある。
Sは、休憩もとらずに追い続けた。
◆第29章 長野県・白馬村──浮気旅行の核心へ
3日目の午後、
二人が泊まったのは長野県白馬村のペンション。
外国人観光客も多く、
冬にはスキーで賑わう場所だが、
この時期は人も少なく、バレにくい。
Sは山間の道で張り込みを続けた。
夜、二人が宿から出てきた瞬間、
Sのレンズがゆっくりと動く。
女性が対象者の腕に絡み、
対象者が髪を撫でる。
はっきりした“恋人の距離感”。
これで、裁判にも強い
「継続性の証拠」が揃った。
◆第30章 4〜5日目──中央道をさらに東へ。ついに東京へ
長野を出た翌日。
対象者と女性は中央自動車道を通り、
東京 へ。
吉祥寺
代官山
渋谷
品川のホテル
観光コースとしては典型的だが、
浮気旅行としても“王道パターン”である。
東京では、
ガルエージェンシー東京本部との連携が大きな力になった。
地元の地理に詳しい東京調査員と協力し、
対象者の複雑な動線を完全に把握する。
Sは言った。
「全国ネットワークがある探偵社じゃないと、
この案件は絶対に追いきれない。」
◆第31章 6日目──東京から一転、西へ戻る
東京で2泊したあと、
対象者と女性はようやく神戸方向に戻り始めた。
しかし普通に戻るのではない。
▼寄り道
静岡県・御殿場アウトレット
愛知県・名古屋市内(高級ホテルに宿泊)
三重県・伊勢神宮付近で観光
7日間かけての
全国縦断・豪華浮気旅行
である。
どれだけ家庭を裏切っているか、
その深さは計り知れない。
◆第32章 7日目──神戸へ、そして証拠がすべて揃う
神戸へ戻った二人は、
そのまま女性を降ろし、
対象者だけが自宅へ帰宅。
笑顔だった。
楽しそうだった。
だが、Sの手には
7日間の“全行動”が記録されている。
1日目:滋賀 → 福井(ホテル)
2日目:金沢(食事・ホテル)
3日目:富山(ホテル)
4日目:長野(白馬村ペンション)
5日目:東京(2泊)
6日目:静岡 → 愛知 → 三重(観光・ホテル)
7日目:神戸帰着
浮気の証拠としては、
前例を見ないほどの“完璧さ”だった。
◆第33章 依頼者Mさん──7日間の真実を知る瞬間
報告書を手にしたMさんは、
一ページ目を見た瞬間に息を呑んだ。
「……ここまで……?」
ページを捲るたびに、顔が青ざめていく。
そして最後のページまで読み終えると、
静かに泣き崩れた。
「あの人が、こんな…。
家族より、こんな旅行を優先していたなんて……。」
Sは隣に座り、静かに言った。
「Mさん。
あなたが弱いわけじゃありません。
真実を知った今、あなたの人生はここから動きます。
私たちは最後までサポートします。」
Mさんは、深く頷いた

